コンサルタントのPTA改革(21):チャートでわかる!健全なPTA会計の作り方

(2020年11月15日追記:こちらの記事内容を最新版にアップデートした新規記事「改めて、PTA会計の『適正化』を考える」を新たにアップしております。そちらもぜひご覧ください。)

チャートでわかる!シリーズの第三回目は、PTA会計について。これを書いているのは3月末ですのでちょっと遅いですが、新年度の予算づくりをする時期ですね。
PTAの会計って結構大事な活動だと思うのですが、特段専門知識を持っている人がやっているわけでもなく、他の活動同様、「前年踏襲」が基本的に続いていきがちです。

しかし!PTA会計は基本的に会員の皆さんから大事なお金を預かって一年間運用していくもので、ちゃんと管理ができないと、

PTAといえども不正会計や赤字経営に陥ってしまう

こともあります。
でもなかなか「PTA会計はどうあるべきか」ということは誰からも教えてもらえないので、私が大事だと考えるポイントを解説してみようと思います。

1. PTA会計はどうあるべきか?

最初に、PTA会計ってそもそもどうあるべきなのか?どうなっていたら健全と言えるのか?ということを考えてみます。

「PTA会計流用」とかでググってみると、教職員がPTA会費等を不正に流用した、という事件のニュースがたくさん出てきます。ほんとにひどいのですが、教職員の中には、私的流用とまではいかないまでも、

PTAの資金を学校運営の財布のように軽く考えている

人もいるようです。
しかし、学校運営に必要な経費のためにPTA会計を流用することは、各種法令違反になりますし、そもそも学校とPTAは全く別の組織ですので、学校がPTAの予算利用を期待すること自体、おかしいのです。

PTAによっては、会計を学校の事務局教諭などに管理してもらっているところもあるようですが、そういうところでは学校会計とPTA会計を明確に切り分けて運営することがしにくいし、保護者の役員からも会計がどのように動いているのか見えにくくなってしまうのではないでしょうか。私からすると、

PTA会計は学校教諭ではなく保護者から選ばれた会計役員が管理すべき

だと考えます。

また、PTAという組織が金銭面で継続していくためには、通常の会社組織ほどではないにせよ、収入(会費や事業収益)が支出(運営費用等)と同額以上であり続けなければならず、そのために適切な予算計画立案や支出の抑制、収入の多様化、などに取り組んでいく必要があります。
どこのPTAでも、周年行事など定期的に多額の出費を行わなければならないことがあると思いますが、それを見越して計画的に貯蓄をしていく必要もあるでしょう。

まとめると、「健全な」PTA会計を実現するには、少なくとも3つの条件があるのではないでしょうか。

PTAChart_0301

2. 会計口座、ごっちゃにしてませんか?

ところで、皆さんのPTAには、会計口座が何個ありますか?

一般会計口座、特別会計口座、周年行事積立金口座、備品積立金口座、などなど・・・PTAによっていろいろ分かれているのではないかと思います。
しかし、それぞれの口座について、「何が収入で何が支出か」ということを明確に記述した文書はありますか?
年度のつど、口座の過不足に合わせて、口座間でけっこう融通している、なんてことないでしょうか?

もちろん会計口座間の融通はあってもいいし必要なケースもあるでしょう。でも、年度のつどでその時の会長や役員の考えでふらふらと融通してしまうのは、各口座の管理がゆるくなってしまいがちになります。
それぞれの口座について、収入の元、支出の先、はしっかりと決めておくとよいでしょう。
下に、一般会計・特別会計・周年行事積立金の3つの口座を管理している場合の例を示しておきます。
PTAChart_0302

3. 年度予算づくりが、最初で最大のキモ!

なんだかんだ言って、年度代わりの時に策定される年度予算で、いかに規律ある予算案を作れるか、というのが最重要ポイントです。
単Pだけでなく区Pや市Pの予算と実績を一通り見てきて、ちょっと問題あるな・・・と思う会計になっている最大の要因は、「ゆるい予算案」だと思います。
下のチャートで説明しましょう。
PTAChart_0303

左右の例は、ともに26年度実績は同じです。250万円の会費・50万円の前年度繰越金から様々な支出があって、最終的に40万円の翌年度(27年度)繰越金が残った、というものになっています。
また、27年度予算の収入の部も同じです。幸い会費は26年度と同額の250万円ですが、あいにく繰越金は10万円減って40万円、総計290万円が収入となっています。

では、ここからどのように支出の部の予算案を作るかですが、よく見られるのは左側の予算案、『規律のゆるい予算案』の例です。この例では、収入の290万円をなんとか各支出項目に振り分けようとして、実績よりも多めに予算額を決めていっています。例えば、運営費は26年度実績は150万円でしたが、27年度予算案では165万円でプラス15万円上乗せされています。
結果として、翌年度に残せる繰越金は、5万円となっています。

本当によく見られるケースかと思いますが、これのどこが問題なのでしょうか?

この予算の作り方の悪いところは、

得られた収入をなるべく全部使いきろう

としていることです。おそらく、予算を残すことはムダに会費をもらっていると思われるのを恐れ、使い切ろうとしているのだと思いますが、それゆえに昨年度実績よりも常に多く、多く使っていくことが許されてしまいます。そこで、普段の活動で、少しずつ予算執行にゆるみが出ます。例えば・・・

  • 役員の打合せで昨年度はお茶だけだったのが今年度はお菓子も出るようになる
  • 昨年度はモノクロで作成していた広報誌が今年はカラーで作成するようになる
  • しまいには、朝からの打合せが延びて昼になったら、なんとか早く終わらせようとするのではなく、弁当代を出してしまう

などなど、出費を節約しようという規律が失われがちになります。

結果どうなるかというと、残る繰越金が、昨年度よりも少なくなってしまうのです。
つまり会費=本来の収入よりも支出が多いということであり、会計的には「営業赤字」です。貯金を食いつぶしながら運営している、ということです。

これが何年も続いたらどうなるでしょうか? 答えは明白で、例年通りの出費がいつかできなくなり、活動に制約が出ます。それだけならまだしも、最悪なのは、出費を抑えず例年通りに活動しようとするため、会費の値上げを考えるようになります。
PTAに対する反感をいっそう買ってしまう事態に陥ってしまうのです。実際は、会費値上げは相当難しいでしょう。

一般家庭で、家計の収入以上に出費していたら、どんどん貯金が減っていくのは当たり前のことであり、そんなことをやる方はいないと思いますが、PTA会計だと、自分のお金じゃないから? 一般家庭のお財布と同じように考えられないから? なのかどうか分かりませんが、貯金の食いつぶしが当たり前になっていることがあります。

ではどうしたらいいのでしょうか?

答えはカンタンです。図の右側の予算案、『規律ある予算案』にあるように、

最終的に繰越金を前年度同額以上残せるように、会費の範囲内で各支出項目に予算を振り分ける

ということです。
これにより、予算額を超えないよう日々使っていき管理していけば、最終的には前年度以上に繰越金を残せます。
一般家庭で言えば、貯金が増える、ということです。

予算上の支出額が前年度よりも減るため、節約をしていかないとこの予算の遂行は難しいと思います。しかし、赤字になって運営が立ちいかなくなったり会費値上げをお願いする事態になるのを避け、今の支出にムダなところはないか、減らしたりなくしたりすることはできないか、と活動を見直すことは、PTAを継続させる意味からも大切なことです。ただでさえ最近の人口減で、会費も減る方向にあると思いますから、

一年でも早く会計の健全化の観点から今のPTA活動を見直す

ということも重要です。

会計健全化を図ることによって、貯金である繰越金が増えれば、会計の面ではPTA組織を継続することができるだけでなく、急な出費にも対応が柔軟にできるようになり、また保護者や学校・地域に金銭面のゆとりを還元する方法も選択肢が広がっていきます。

「ゆるみ」をなくし、「ゆとり」のあるPTA会計を目指しましょう!

PTA運営や活動、PTA講演に関するお問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。

  1 comment for “コンサルタントのPTA改革(21):チャートでわかる!健全なPTA会計の作り方

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください