保護者アンケートとディスカッションを通じて、来年度の運営・体制の改革方針はほぼ決まりました。ただ、この内容は校長先生・教頭先生を含むPTA事務局の中で合意されたことであり、保護者への情報発信をしていく必要があります。ただ情報発信をするだけでなく、保護者も会員の一員として、改革方針を理解してもらい、できれば新PTAのねらいどおり、来年度から自主的に活動に参加してもらえるようにしたいところです。
コンサルティングのプロジェクト、特に社員を巻き込む業務変革のプロジェクトでは、プロジェクトのコア・メンバーとマネジメント層で改革構想を合意した後には、実際に組織や業務やシステムが変わる現場の社員向けに、説明会を実施して主旨を理解してもらい、改革活動に巻き込み、協力してもらえるようにする、という状況が必ずあります。まさに、今回のPTA改革構想を、いよいよ現場=保護者の皆さんに展開していく段階まで来ました。
保護者の皆さんには、内容を印刷したチラシをただ配るのではなく、直接語りかけることで、施策内容に至る思いを十分に理解してもらおうと考えました。そこで、異例ではありますが、『PTA運営・活動方針説明会』と称して、保護者・教職員を集めた説明会を実施することにしました。
説明会は、ディスカッションを行なった9月末から2ヶ月先の11月に、同じ内容を2回実施することとしました。11月は学校・PTA行事が多く保護者が学校に来るタイミングがあるため、その行事とくっつける形で日時設定しました。具体的には、1回めは授業参観の後、2回めはPTA行事であるフェスタ(バザーや出店を行うイベント)の中の一つの企画として、実施することになりました。もちろん、保護者を集めるためには事前の通知とその準備をしなければならないため、9月末からある程度時間を置く必要もありました。
他に、このタイミングで説明会を行わなければならない理由がもう一つありました。それは、今回の改革施策の一つであり、最も保護者にとって分かりやすい施策である、「PTA委員決定の前倒し」施策が1月に控えていたからです。
私が会長になる前に、現行のPTAで気に入らなかったことの一つに、いわゆる委員決めの際の「我慢比べ」「くじ引き」がありました。どうして子ども達が進級して、クラス替えもして、新しい担任も着任して、さあこれから、という新学期の時期・場所で、PTAの常任委員を決めるが故の保護者同士の委員選定を避けようとする我慢比べや、その後の正副委員長を決めるくじ引きのために、暗い気持ちにならなければならないのか? それを避ける知恵はないのか? という疑問を解きたいと思っていました。そこで学校側と何度か議論して出た結論が、「PTA委員決定の前倒し」です。
これは、①正委員長だけは、別途で推薦委員会によって決めておくことで、委員になっても正委員長になることはない、という安心感を与えつつ、②クラス毎の委員数という制約を取り外す、③現年度のうちに学年単位で懇談会を開催し委員決定をすることで、当年度で仲の良くなった人たちで集って委員活動に手をあげられるようにする、というものです。これによって、4月の新年度保護者懇談会では、新年度に向けてどのように子ども達を育て見守っていくかを先生と保護者で前向きに話し合ってもらい、気持ちよく新年度をスタートさせてもらいたい、という思いを実現します。
この前倒しした委員決定を行うタイミングが1月初旬の授業参観の日しかないため、逆算して計画していくと11月頃には説明会および保護者への通知が必要だったわけです。
このように9月末の改革方針決定から、1月の委員決定、そして来年度5月のPTA総会での新運営体制スタートまで、時間があるようで意外となく、限られたタイミングで様々なコトを仕掛けていかないと間に合わないため、実際には、10月から5月まで8ヶ月間の中でキーとなるイベントと準備作業をまとめたスケジュールを作成していました。これもまた、クリティカル・パス(=プロジェクト全体の中でスケジュールを決定するタスクの流れ)を重点管理するコンサルティングのプロジェクト遂行に近いものがあります。
さて、説明会の方ですが、教務主任の先生にご案内のチラシを作成してもらいつつ、私の方ではこれまた仕事同様に、パワーポイントを使ってプレゼン資料を作成しました。なるべく簡潔に、ぱっと見て分かってもらえるように、仕事の時よりフォントサイズを全体的に4ポイントは大きくしました(笑)。
一方、役員の方でも、例の「子どもサポート運動」をしっかりと保護者の方に理解してもらえるよう、専用の原稿を作成してくれました。せっかくなので、説明会の場では説明をすべて私がやるのではなく、途中でバトンタッチして彼女たちに話してもらうことにしました。
第1回めの説明会は、体育館に椅子を50脚ほど並べ、プロジェクターとPCを持ち込んで実施しました。まるでセミナーのプレゼンテーションのようでした。残念ながら保護者の方は20名弱しか集まらなかったのですが、教務主任の先生が他の先生方に声をかけて下さり、30名ほどの先生方全員が参加してくれました。私はあまり気が回ってなかったのですが、今後の新しい委員決定方法に直接関わるのは先生方ですし、先生方にも直接私たちの思いをお伝えすることは必要なことでした。実際、教務主任の先生は私たち保護者役員の思いを十分に汲み取って、先生方の中での個別説明会や具体的な手順の検討などを進めてくださっており、本当にありがたかったです。
第2回めの説明会は、フェスタの最中でしたので、校庭のジュース売り場やお菓子売り場のテントと並べて説明会用テントを立て、椅子を並べ、やはりプロジェクターとPCでプレゼンしました。これまた、PTA役員の方が私の知らない間にちゃんと看板を作ってくださっており、感激しました。今回も20名弱の参加で、やはり期待していたほど多くの方々で溢れかえるようなことはありませんでしたが、逆に自分と保護者の皆さんとの距離が近く、1回めよりも活発に質問が出て、密に意見交換が出来たように思いました。
全世帯数に対して、説明会の集客は決して多くはありませんでしたが、現在の実態はこういうものなのでしょう。とにかく、会長就任後数ヶ月に渡り検討し続けまとまった改革方針は、ついに保護者に発信され、賽は投げられました。今後は、施策を徐々に実行に移しつつその結果を評価し、継続的に改善していくという、改革の「実行フェーズ」に入っていくことになります。
そしてその試金石は、年明けすぐの1月に行われる、「PTA委員決定の前倒し」をする保護者懇談会です。ここで改革施策が初めて実施されます。果たして、スムーズに委員は決定されるのか、それとも例年通りの我慢比べが繰り返されるのか? どのような結果になるのでしょうか。