チャートでわかる!シリーズの第四回目は、PTAの役員体制について。このシリーズ、前回からかなり時間が空いてしまいました。スミマセン。
いろんなところでPTA改革のお話をしていて気づいたのですが、そもそものPTA役員体制のルールが、『改革・改善を進めづらくなっている』PTAが多くあるということです。
自身のPTA改革を進めるときに、もともと好都合でそうなっていたのであまりお話してこなかったのですが、実は役員体制のルールは継続的な改善を進めるには大事なポイントです。
継続的にPTAの運営を見直し、改善していける役員体制のルールとは?それはズバリ、
2名体制+2年任期制
が、有効です。以下、解説していきましょう。
仮に、PTA役員体制が、会長1名の下、副会長・会計・書記の3つの主要な役割があるとします。
2名体制+2年任期制とは、この3つの主要な役割について、
ルール1:1つの役割に2名(正・副)の役員を任命する
ルール2:2名の役員の任期は、互い違いに2年制とする
と定める、ということです。
ルール1は、特に珍しいことではなく、多くの学校でそうなっているのではないかと思います。2名いれば、仕事を2人で振り分けたり、一人が都合が悪いときにもう一人が対応する、ということができます。学校によっては、多数のイベントや対外の会議参加を分散させるため、副会長を何人も任命しているところもあると思います。
しかし、私は安易に人数を増やすことにはあまり賛成しません。それはつまり、多くの仕事をこなすために多くの人数を置くということであり、『そもそもその多くの仕事、ほんとにやる必要あるの?』という課題に目をつぶってしまうことになるからです。また、人数が多いと組織内部のコミュニケーションも複雑になります。
人数を増やす前に、まず仕事の量と中身の見直しをしていただきたいと思います。そして、それをより効率的かつ継続的に行うために重要なのが、ルール2です。
ルール2は、役員の任期を2年と定めるとともに、2名が2年一緒にやって一度に次の2名の人達に交代するのではなく、2名が1年ずれて2年任期を務め、1年に一人ずつ次の人に交代していく、ということです。
下にチャートを用意しましたので、こちらでルール2の有利な点を見ていきましょう。
チャートの左は役員の任期が決まっていない場合(たいてい1年限り)、右は2年任期制の場合、の例を示しています。横軸は役割、縦軸は年度、アルファベットと四角の枠は役員の方々の任期を示しています。
双方ともに、副会長・会計・書記は2名ずつと決まっていて、H26年度はAさん〜Fさんの6名でスタートしたとしても、任期制の違いだけで、その後のPTA運営に大きな違いが生まれます。
まず最初に、PTAを1年やって得られた経験を『直接的に』次の年度に活用したり新任役員にできる人・年度の機会の数が、左右で全然違います。チャートでは青い丸で示していますが、左のケースは5年間で5回しかないのに対し、右のケースは12回です。
役員を担当された経験のある方ならお分かりになると思いますが、前年度に一年通してPTA役員をやった人が一緒にいると、活動推進の面でも精神的な面でもかなりラクにPTA役員活動を進められます。何か分からないことがあればすぐ聞けますし、前年度の失敗を繰り返すこともなくなります。
もちろん毎年、反省点などをまとめた引き継ぎ文書を残しているPTAがほとんどだと思いますが、紙に書かれたことだけを読むだけでは、なかなかうまくは活動できないものです。前年度の役員が今年度も残ることで、前年度の経験をスムーズに引き継ぎ、今年度にフルに活用できるようになります。
二番目に、直接的に経験を活用できる機会が多いということは、PTAという組織が自身の活動の経験値を高めることにつながります。
PTA組織としての経験値が高まるほど、同じことをやるのでもより効率的にできるようになるだけでなく、より価値のある中身への改善・改革をやりやすくしていくことができます。
左のケースであれば、みんな1年任期のため、なんとかこの1年をやりすごすことを考えますし、なかなか改善・改革施策を実施するというところまでは動きづらいです。しかし右のケースであれば、特に2年目の役員は前年度の経験に基づき今年度の活動をより効率的・効果的な内容に変えていくことがやりやすくなります。2年任期なので、早い段階から(場合によっては前年度から)今年度のための改善・改革施策を検討し実行に移しやすくなります。
三番目に、これは副次的な効果ですが、毎年交代する役員の数が決まり、かつ少なくて済むので、新任役員のなり手探しが比較的ラクになります。
例えば左のケースでは、H27年度はDさんだけが継続するので5名、H28年度はGさんとJさんだけ継続するので4名、H29年度はLさんだけが継続するので5名・・・とほとんどの役員のなり手を集めていかねばなりません。なり手を探すときも、前年度経験者がいないとやはり不安なので、やりたくても気が引ける候補者が出て来るでしょう。
一方、右のケースでは、毎年なり手を探すのは3名だけですし、前年度経験者もいるので聞きながらやれるよ、という誘い文句も使えるので比較的なり手も見つかりやすいでしょう。
改めてチャートを振り返ってみてください。あくまで例示ですが、H26年度〜H30年度の5年間を比較したとき、左のケースは25名の役員のなり手が必要ですが、右のケースは18名で済みます。経験の活用の数も5回と12回と大きく違います。ある意味、少数精鋭での運営となりますので、PTA運営は大きく改善されていくでしょう。
PTA役員が毎年コロコロ変わるというのは、会社で言えば、専務や常務といった役員が毎年コロコロ変わるのと同じです。そんな経営の一貫性も継続性もない会社の業績が、良くなっていくとは思えないですよね? 経営用語では『ゴーイング・コンサーン』と言って会社の継続が社会的責任となっていますが、PTAも世の中に数ある組織の一つとして、そして多くの保護者を巻き込む組織として、ある程度一貫性や継続的改善が保てる運営が必要ではないでしょうか。
共働き率の増加や自己実現手段の多様化により、今後ますます、PTA役員・委員のなり手は減っていくでしょう。しかし、すべてのPTAが地域や学校や子どもたちにとって有益なボランティア団体になれることは間違いないですし、すべてのPTAがそのように変わっていかなければならないはずです。
まず心ある役員の皆さんがいま2名体制+2年任期制を今年度から、もしくは来年度から取り入れ、自分たちのPTAをより良くしていく第一歩を踏み出していただけることを切に望みます。
PTA運営や活動、PTA講演に関するお問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。
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