コンサルタントのPTA改革(8):改革の方向性と施策の合意

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保護者アンケートで、保護者の皆さんの地域や学校への関心度やPTA活動についての意見を把握することができました。次に、この情報をベースとして、来年度からのPTA運営・活動をどのように変えていくか、事務局の中で意見をまとめ、方向性を合意することが必要です。
 
とはいえ、アンケートで大方の課題仮説・施策仮説は検証できているので、あとは事務局の中で方向性について確認を取り、施策の具体的内容を詰めていくことができれば、改革案は完成できます。
 
アンケートの結果をとりまとめ、事前に役員の皆さんに配布して目を通しておいていただいた上で、いよいよPTA事務局全員でのディスカッションの場を持ちました。土曜の午前中に設定しましたが、保護者の男性・女性全役員8名だけでなく、校長先生・教頭先生・教務主任の先生方も含め、事務局全員が学校の校長室に集まってくれました。
 

私は、いつものコンサルティング・ワークでやっているように、ホワイトボードを背にしながら会議のファシリテーター役(議論進行、まとめ役)を買って出ました。議論の大きな流れとしては、まず現状のPTA運営や活動で変えなければならないことを明らかにし、次にそれをどのように変えるかという具体的な解決策を明らかにする、というものにしました。前半は議論をある程度自由に発散させ、後半では解決策に向けて収束させていくことで、決められた時間内に結論を出そうというものです。
 
まず、役員の皆さんに、アンケートを読んで感じたことや日頃変えたいと思っていることを、好きなように言っていってもらいました。私は会話しながらそこで出たキーワードを1つずつホワイトボードに書き込み、意見のやりとりを可視化しました。一人が何かを発言することで、他の参加者がまた追加のアイデアを話し、私はそのキーワードをまたホワイトボードに書き込み・・・ということを繰り返しました。
 
 
議論の中では、PTAの方向性を決める重要な意見のやりとりが行われました。
 
例えば、アンケートの回答で比較的多かった意見の一つに、『役員・委員のポイント制』という考え方がありました。これは他の学校でも取り入れているものですが、例えば6年間の在籍中に2回は必ず役員・委員をやろう、とか、ボランティアを5回やったら委員を1回免除、とかいうものです。これを取り入れるかどうかという議論をしました。
 
しかし、これについては私自身も、役員の皆さんも、否定的な意見でした。結局、ポイント制というのは、PTA役員や委員の活動自体が、何らかの「義務」「強制」であることを暗に示しています。そしてこれが、保護者それぞれの家庭の事情を考慮せず、役員や委員をやらない人たちを批判する「不公平感」につながっているのです。しかし私たちのPTAは、地域や学校の環境を良くしたいと思う保護者が自主的に参画する団体、活動でありたいと考えています。その考え方からすると、「義務」「強制」につながる仕組みを持ち込むことはあってはならないのです。役員や委員は、やりたい人が何度でもやってもいいのです。PTA活動に参加できるというのは、子ども達が学校に通っている間でしかできない、保護者に与えられた「権利」であることを皆で再確認しました。
 
ポイント制を導入しては、というアンケートの意見は多かったのですが、今回この意見は取り入れないことで合意しました。その代わり、活動の楽しさやメリットを打ち出し、参加のハードルをできるだけ下げて、誰もが地域や学校の環境を良くすることに貢献できるようなやり方を考えよう、ということになりました。
 
 
また、PTA活動を、委員を中心とした(しわ寄せが行くような)活動ではなく、9割以上の方がやってもいいと考えているボランティア中心の活動へシフトする、ということも重要なテーマでした。多くの改革的なPTAでは、委員会をなくしてしまいすべてボランティアで活動する、という考えを取り入れているところがあります。そこまで行かなくとも、ボランティア中心にシフトしていくことは、私の念頭にも当初からありました。
 
しかし議論の中では、地域や学校、子ども達に関わることを、「当番」という形で取り入れられれば、強制と思わず、全員参加しやすくなるのではないか、という意見が出されました。そこで役員の方から、提案がありました。それは、今漠然と保護者全員に案内しているボランティアを、その内容や負荷を考慮して、学年別のお手伝い活動として再編し、学年別に募集をかけようというものです。提案では、すでにどのPTA活動をどの学年向けボランティアとして募集するかというところまで具体化されていました。
 
実は、この打合せに向けて、役員さんが常任委員長たちを巻き込み、アンケート結果により具体的な案を詰めてきてくれていたのです。そのことを当日初めて知り、そこまで準備してきてくれていたことを嬉しく思いました。
何度か意見を交わした結果、この活動を『子どもサポート活動』と名付け、単純に「委員からボランティアへ」だけでなく、一つ工夫を加えた、人が集まりやすいボランティア活動へ、と変えていくこととしました。
 
 
PTA活動全体をもっと活性化するため、多くの人を引きつけるためには、そもそも保護者どうしが他人のままではだめで、もっと交流できる場でなければならない、という意見も出されました。幼稚園・保育園のころは保護者どうしも顔見知りで仲良くなれ、園の活動にも積極的になれたのに、小学校のPTAでそうなれないのは、「交流を深める」という場がどうしても作れないからだ、と。
 
確かに今までの活動では、仮にボランティアに参加しても知らない人ばかりで、親どうしをつなぐ子ども達もその場にいないことが多いので、交流が生まれにくいものでした。それではなかなか参加しようという気分にもなれません。そこで、PTAの活動は、同じ地域に住まう保護者達の交流の場でもある、という考え方を持ち込むことにしました。前述の『子どもサポート活動』はもちろん、保護者どうしが一同に集まって交流を図れるイベントを年度の初めにやろう、ということを施策に盛り込みました。
 
 
他にもアンケートの結果などを踏まえ、保護者が不要と評価した活動の停止、事務局体制のスリム化(委員会を4つから3つに削減)、委員選定の前倒し等による年度初めのくじ引き回避、より柔軟なメールシステムの導入による事務作業の軽減・情報発信頻度の増加、などを施策として挙げることにしました。
 
 
当初2時間で設定したディスカッションは、30分オーバーしてしまいましたが、私たちが目指すべきPTAの考え方や、改革施策を、皆で合意するところまで辿り着くことができました。また、この議論を通じて、私はようやく役員の皆さんとの一体感が生まれたように感じました。
 
参加した役員のお母さんからも、役員になって初めて活発なディスカッションらしい機会を持てた、皆の意見を知ることが出来た、いよいよ改革が動き出したように思った、というようなフィードバックをいただきました。
 
校長先生や教頭先生も、最初から最後まで付き合っていただき、学校側としての意見もところどころ発言していただきながらも暖かく議論を見守ってくださり、PTAの改革内容について合意していただけました。
会長としては今日のディスカッションの結果を、PTA運営・活動の改革施策としてまとめることを約束しました。
 
 
最後に教務主任の先生から、この内容は保護者にしっかり説明する場を持ったほうがよい、というアドバイスをいただきました。そこで、授業参観やPTA主催イベントが集中し保護者が学校に集まりやすい11月に、PTA会員向けの説明会を実施することにしました。しかも1回ではそのタイミングで来れない保護者も多いということで、同じ内容を2回実施することになりました。
 
PTA会長が来期の改革案、PTAのあり方についての思いを直接保護者・先生に熱く語る ――― ついに、そんな場がやってくることになりました。
 
 
   

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