コンサルタントのPTA改革(7):アンケート回答による仮説検証

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こちらもお読みください → コンサルタントのPTA改革(18):チャートでわかる!PTA保護者アンケートの作り方
 
夏休みを使って作成し役員の皆さんにレビューしてもらって完成したPTAアンケートは、夏休み明けすぐの9月第一週に配布しました。回答締め切りが直前だと子どもから親に渡される前に締め切りが過ぎてしまう可能性があるし、余裕を見て長くしすぎるとどこかに片付けられてしまって忘れられてしまうので、回答の締め切りは2週間後に設定しました。
 
並行して、アンケート回収後の段取りを役員の皆さんに連絡しました。まず全員集まって役員全員に分配、全員で手分けしてExcelの集計表に入力、会長が集計・・・など、結構手間のかかる作業をなるべく分担してできるようにしました。最後に、集計結果をもとに役員全員で集まって課題と対策を議論しようということにしました。ここまでを1ヶ月でやるスケジュールとして、なるべく早く結果を保護者に回答しようと考えました。


アンケートの回答は、事務局側の予想に反して、相当数が返ってきました。総世帯数700超に対して400近く、正確には52%、実に半数以上の保護者世帯から、回答を得ることが出来ました。しかも、このすべての回答を、教務主任の先生がすべて締め切り当日までに全部Excelに入力してくださったのです! これにより、事務局の入力・集計作業予定の2週間が不要になりました。これには本当に頭が下がりました。
 
教務主任の先生からExcel集計表と実際の400枚の回答用紙を受け取り、私は全部のコメントの読み込みと分析作業に入りました。
 
52%の回収率というのは通常の選挙の投票率よりも高く(笑)、意外と保護者の皆さんがPTAについて関心を持っている、もしくは言いたいことがある、ということが分かり、安心しました。全く無関心で回収率が低ければ、そもそも改革をやっている事自体の意味がなくなってしまうからです。
 
そして多くのコメントは、読み甲斐がありました。私が初めて目にする、一般の保護者からのフリーコメントです。多くの皆さんが自由記述に多くのコメントを寄せてくださいました。
 
感想は最後に取っておくとして、アンケートの目的である『仮説検証』に戻ります。
今回のアンケートは、前回整理した課題仮説、施策仮説が正しいかどうかを、保護者の意見で検証する、という目的がありました。
 
そこで基本的に、
 

  • 選択肢による回答は、個数と全体におけるパーセンテージを集計
  • 自由記述による回答は、類似するコメントをグループ化してメッセージを集約

 
という形で回答結果を分析していき、課題仮説・施策仮説と突き合わせ、その正しさを確認していきました。例えば以下の様な形です。
 

1)存在意義
【仮説】

  • 保護者は、子どもたちを取り巻く学校や地域の環境を良くすることに関わりたい。
  • PTAは、そのような保護者のために役立つ団体になりうる。

【アンケート結果】

  • 約98%の保護者が、子どもたちを取り巻く学校や地域の環境を良くすることに関わりたい、と思っている(とても思う・まあ思うの回答合計)
  • 上記のうち約97%、全体で約96%の保護者が、環境を良くすることに関わるにあたりPTA は保護者の役に立つ団体になれると思っている(とても思う・まあ思うの回答合計)

【検証結果】

  • PTA事務局が仮説として設定した、PTAの存在意義は、ほとんどすべての保護者からも支持してもらえる内容と言える。

 
2)活動内容
【仮説】

  • 今のPTAの活動はほとんど前年踏襲で見直されていないため、保護者が不要だと思っている活動があるはず。

【アンケート結果】

  • 年間で行われる15のPTA活動を選択肢として、来年も続けるべき・見直すまたはやめるべき活動を3つまで選択してもらった結果、フェスタや交通安全ボランティア等は継続支持率が高いが、速報紙発行は見直すべきという回答が多かった。
  • その理由には、学校の先生方が発行するレターと内容が重複していたり、旧来の紙での作成・発行をしていることから速報性が低い、というコメントが挙げられた。

【検証結果】

  • 速報紙のように、学校側の活動と重複していたり今の時代にそぐわないものは、保護者も不要と認識している。そういったものはやめていってもよいと考えられる。
  • 実際、広報活動として広報委員会が設置されているが、その半分は速報紙作成作業にあたっている。これをやめれば委員会を一つ減らすことができ、体制のスリム化=委員選定作業の低減につながる。

 
3)運営体制
【仮説】

  • 誰もがPTAの役員や委員にはなりたがらない。その理由には、平日昼間の仕事との兼任が難しかったり、正副委員長にくじ引きで決まってしまうのが負担だったり、一度PTAの役員や委員をやった経験上その非効率さに辟易したから。
  • 役員や委員の役割や負担度合い、やってみることによるメリットが、保護者に伝わっていない。

【アンケート結果】

  • PTAの企画運営に携わる役員・委員を、今後やってみたいと思う人は48%いるのに対し、思わない人が52%いて、拮抗している
  • これを最年長のお子さんの学年別(=PTA経験年数別)で見ると、やってみたい人は1年生・2年生の保護者では6割近いのに対し、3年生以上になると5割を切る(役員・委員経験者の割合は逆に5割を超える)
  • やってみたいと思わない理由には、「仕事等があり、多忙」という理由が一番多く、次に「正副委員長職や役員職の責任が重くてできない」(当PTAではくじ引きで役職決めをしている)、「やる人が偏っていて不公平」「過去にやった」といった内容が多い。
  • 一方、個々の活動に選択参加できるボランティアを、今後やってみたいと思う人は89%にのぼった(とても思う・まあ思うの回答合計)。しかも、この割合はPTA経験年数別で見てもすべて9割近くで、変動が小さい。
  • その他、多くの保護者が参加するようになるにはどうすればよいか、という自由回答については、以下の様な意見が得られた。
    • ボランティアのやり方を工夫する
    • 活動内容を具体的に説明する、活動のメリットを啓蒙する
    • 夜・土日にできる活動を取り入れる
    • 紙以外の媒体を活用する
    • 正副委員長になるリスクをなくす
    • 会員同士の親睦を図る
    • ポイント制・義務化等で参加を増やす
    • 委員を増やして負担を減らす

【検証結果】

  • 意外とPTA役員・委員をやってもよいという人たちはいる。しかしながら、仕事等で忙しく一年中時間を拘束される(と思われている)ことや、正副委員長にくじ引きで決められてしまうリスクがあることが障壁になっている。
  • PTA役員・委員の活動がどのような内容・頻度・時間がかかるものなのか、メリットには何があるのかが周知されておらず、二の足を踏んでいることもある。
  • 一方、比較的自由に活動時間を選択できるボランティアには、多くの保護者が前向きである。

 
全体を通して見ると、大方の課題仮説・施策仮説は保護者も同様に考えていたということが分かり、事務局の課題認識や施策内容は適切であり、保護者から支持を得られるであろうことを確認できました。
しかしながら、例えば委員主体からボランティア主体へどの程度シフトすべきか、参加者を増やすためのポイント制は是か非か、といった論点は依然として残っており、これらは一度役員内部で議論し、事務局としての方向性を決める必要があると思いました。
 
それにしても、保護者アンケートは、ここまで多くの方が貴重な意見を提供していただけたということに驚きと感動がありました。自由記述欄は紙面の都合で小さかったのですが、それでは足りず裏面まで使って意見を書いてくれる保護者の方も。初めて聞く直接の意見は、いくつか認識が全く異なるもの、PTAについてご理解いただけていないものや、辛辣で耳の痛いものもありましたが、概して建設的であり、これからの改革施策の具体化やその展開にあたって後ろ盾となる、非常に価値のあるものでした。
 
また、中には以下の様な、改革を進める側として嬉しくなるようなコメントもあったことを付け加えておきます。

最初はPTAには消極的な参加でしたが、いまのPTAキャッチフレーズでとても好きになりました。アンケート結果に興味があるので、ぜひ資料配付して下さい。

このアンケートを見て、関心が薄れていたことに気がつきました。具体的にどうすればいいのか分かりませんが、自分の意識を少し地域に対して持ってみようと思いました。

このようなアンケートを企画された今期のPTA事務局さんはすばらしいです。ぜひ改革をお願いします。期待しています。

 
他の役員さん達は、アンケートの結果をどう感じたでしょうか。校長先生や教頭先生は、PTAの改革をどう受け止めるのでしょうか。直接の意見交換をすべく、私はアンケートの結果からまとめた『改革方針案』をプレゼン資料にまとめ、1週間早まった役員ディスカッションの場に持ち込みました。
 
 
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