本:ワーク・シフト


 
日頃から、自分のキャリアとともに、まだローティーンの娘たちのキャリアがどうなっていくのか、ということを考えることがある。自分は40代だが、田舎のサラリーマンの父親を見て育ち、バブル経済が終わりかけの大学卒業の頃は、大学院に行くか普通に就職するのが普通の選択肢であった。しかしその後20年経って、時代は大きく変わった。残念だが今の娘たちに、自分がやってきたように普通に勉強し就職しろとはとても言えない。それはこれからはとてもリスクのある選択肢であるように思われるからだ。かといって、ではどのような選択肢を示すべきなのか、明確になっていたわけでもない。
 
同じような思いを著者であるリンダ・グラットンも抱えていたようだ。彼女は大勢のビジネスパーソンとの対話を通じて知見を拾い集めて縫い合わせ、「2025年の未来」の姿を描いた。今後予想される5つの変化要因と、そこから見いだせる「暗い未来」と「明るい未来」、そして「明るい未来」とするために我々が取り組むべき「シフト」をまとめている。
 

「暗い未来」と「明るい未来」はそれぞれペルソナ的に特定の個人をイメージしてその一日を記述してあり、分かりやすい。と同時に、すでに「暗い未来」の一端が自分の今の生活に入り込んでいることに気付かされる。それは確かに容易に想像できる未来であり、あまり楽しそうでもない未来なのだ。
 
この本は、ジャック・アタリの「21世紀の歴史――未来の人類から見た世界」を読んだ時のような、インパクトのある、未来を考えることができる本。全てが示唆に富み、子ども達だけでなく自分の生き方についても考えさせられる。自分が将来最優先したいものと現在の仕事との折り合いをどのようにつけ、何を選択し何を諦めるか、真正面から捉えて考える時期が来ているし、多くの社会人が遅かれ早かれ考えなければならなくなるだろう。
 
この本の最後には、著者から子ども達・経営者・政治家向けの手紙、という形でエピローグがまとめられている。まずは子ども達への手紙を参考に、自分の娘たちへの手紙を自分なりに書いてみるつもりだ。
 
【毎日復習したいポイント】

  • 第一のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
    • 知的資本:広く浅い知識をもつのではなく、いくつかの専門技能を連続的に習得していく
    • 必要なもの
      • 専門技能の連続的習得:価値がある、希少性がある、まねされにくい専門技能を連続して習得し続ける
      • セルフマーケティング:自分の能力証明や評判マネジメント、ギルドへの参画により、自分の能力を取引相手に納得させる材料を確立する
    • 可能性のあるキャリア:草の根の市民活動家、社会起業家、ミニ起業家
    • 可能性のある専門技能:生命科学・健康関連、再生可能エネルギー関連、創造性・イノベーション関連、コーチング・ケア関連
    • カリヨン・ツリー型キャリアを築く
  • 第二のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
    • 人間関係資本:孤独に競争するのではなく、他の人達とつながりあってイノベーションを成し遂げることを目指す
    • 必要なもの
      • ポッセ:比較的少人数、スキルや知識が近い、信頼関係がある
      • ビッグアイデア・クラウド:人脈の外縁部、自分とは違うタイプの人たち、多ければ多い方がいい
      • 自己再生コミュニティ:現実世界の、心の支えと安らぎの源となる人間関係(それが構築できるような働き方を選ぶ必要がある)
  • 第三のシフト:大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
    • 情緒的資本:際限ない消費に終始する生活を脱却し、情熱を持って何かを生み出す生活に転換する
    • 必要なもの
      • 仕事をする意味を、「お金を稼ぐため」から、「充実した経験をするため」に書き換える
      • 働き方を選択することで、どういう結果が予想され、何を諦めることになるかを理解する

【毎週復習したいポイント】

  • 未来を形作る5つの要因(2025年)
    • テクノロジーの進化
    • グローバル化の進展
    • 人口構成の変化と長寿化
    • 社会の変化
    • エネルギー・環境問題の深刻化

 

   

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