「フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか」、「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」、と4年に一度社会に大きなインパクトを与える書籍を提供し続ける、ダニエル・ピンクが2010年に発刊した本。
Action Raising Platform のコンセプトにもあるような、普通の人が社会的課題の解決にモチベーションを持ち続けてもらうためにはどうすればいいのか、という自分の課題解決のヒントを得たくて少々古い本だが読んでみた。結論からすると、大いにヒントを得たように思う。もっと早くに読めばよかった、と少々後悔した。
今の社会はすでに労働集約的な働き方からクリエイティブな働き方がさまざまな仕事で求められているにも関わらず、企業が人を評価するしくみは、昔のアメとムチのやり方から変わっておらず、それがかえって人々の生産性を下げている、と。それは科学的考察からも昔から十分に導き出されているにも関わらず、ビジネス界ではほとんど顧みられていない。新しい働き方に対応した新しいしくみが必要であると訴えている。
本の中では企業組織での人材活用のあり方を中心に書いているがこの書評ではそれはちょっと置いておく。
個人個人が自分の社会貢献が何かを考えながら生きている現代では、より大きな目的を自らが設定し、その目的に到達するために自律的に努力し、しかもそれを自ら楽しんで行うことができる、という主張は、自分が考えている理想像の理論的バックボーンになりそうで、心強い。
最近巷で話題のゲーミフィケーションの考え方も、このへんから関連してきているように思う。
普通の人々に、今日本が抱える課題と、その解決につながる施策を提示する。人々はそこから最も興味のある課題を自ら選択し、自分が少々の努力をすれば達成できる施策を自ら選択する(自律性・目的)。施策を達成していくことで自分の経験値が上昇し、課題解決につながっていくことを目に見えるようにする(熟達)。
そのようなしくみをつくり、日本の課題解決に貢献したい。
ちなみに著者がこの本の内容をTEDでプレゼンしている。これも必見。スタンドアップコメディのような面白さで、ぐいぐい話に引き込まれる。本も面白いが、プレゼンも最高。
【毎日復習したいポイント】
- 自己決定理論(SDT)=自律性を発揮し、自己決定し、お互いにつながりたいという欲求を備えており、その欲求が解き放たれたとき、人は多くを達成し、いっそう豊かな人生を送ることができる
- タイプIの行動の3つの要素
- 自律性(オートノミー):自己決定性、選択して行動する
- マネジメントが必要なのではなく、人間の先天的な能力、すなわち「自己決定」の復活が必要
- 4つのT=Task(課題)、Time(時間)、Technique(手法)、Team(チーム)に関する自律性が必要
- ROWE=Result Only Work Environment
- 熟達(マスタリー):何か価値あることを上達させたい欲求
- フローな状態(活動自体が報酬。課題は難しすぎず簡単過ぎないが現在の能力よりも一、二段高く、努力しないと到達できないレベルの事を実施することで、他とは異なるレベルの集中と満足感が生まれている状態)が必要
- マインドセット(知能は成長するという心の持ち方が必要)、苦痛(忍耐力と情熱が必要)、漸近線(到達できないが、喜びは実現することより追求することにある)
- 目的:人生の意義
- 企業の目標(営利目的だけでなくなる)、言葉(人間味あふれる言葉の使用)、指針(目的意識を入れる)の変化
- お金の使い道には収入と同程度の重要性がある。他人のためや目的の為に使うと主観的な幸福度が増す
- 自律性(オートノミー):自己決定性、選択して行動する
【毎週復習したいポイント】
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金銭的な報酬制度のバグ
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金銭的報酬が利他的な行動を抑え、善行を積みたいという自発的欲求を阻んだケース
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罰金のせいで決断が道徳的義務感から、純然とした取引に変わるケース
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タイプIの行動は、内部からの欲求をエネルギー源とし、活動そのものから生じる満足感と結びついている
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自分で人生を管理したい、新しいことを学び創造したい、そして向上して世界に貢献したいという、内在する欲求をもとに行動する
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【ときどき復習したいポイント】
- アメリカで生まれている新たな企業形態
- Bコーポレーション 長期に渡る価値観や社会的影響を重視する企業に授けられる認証で、社内法規改定が必要
- L3C (Low-profit Limited Liability Corporation) 低収益有限責任会社。主目的が社会的利益の提供
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